薬学部のごく一部しか知らない錠剤作りの話(角速度、周速度)
これから少しずつ製剤に関わる話を書いていきたいと思います.
薬学の中でも専攻している人は非常に少ないので,
薬学部の人でも新鮮に感じることと思います.
何かを考える時,サイズが変わると大きく変わることはよくあります.
薬物動態でも子供の体表面積を換算しただけでは,
投与量があわないことがありますよね.
粉体でいうと粒子径や表面積が減少するにしたがって,比表面積のパラメータは増加します.
そういうなかで打錠機のサイズも大きくなると,ちょっと気をつけないといけないことがでてくるようです.(先日のセミナーで学びました.)
今日は打錠機のスケールアップ時に発生する問題についてです.
新薬を錠剤に仕立て上げる時に,まず小規模の,サイズの小さい打錠機で錠剤を打ちます.
これは開発段階で候補化合物を大量に準備できないという理由からです.
小さいサイズの打錠機で成功すれば,サイズを大きくしてcommercial scaleで検討します.
ちなみに打錠機を見た事がない人は,Fig.1 を参考にしてください.(菊水製作所のHPから拝借させていただきました.)
図は円盤の展開図です.上から見ると円形になっていて,外側に臼(粉末が入るところ)穴が見えます.
FIg.1
打錠機のサイズを大きくするということは,この円盤が大きくなるということです.
円盤が回って,Fig.1 の圧縮ロールのところで粉末に圧力がかかって錠剤が出来るのですが,サイズを変更した際に回転数(rpm:1分あたりの回転数)は普通変わらないと考えがちです.
しかし,回転数が同じでも Fig.2のように同じ時間に臼が移動する距離が異なります.
Fig.2
こうなると圧縮ロールを通過する時の速度が異なります.
(これを臼の周速度が異なるといいます.)
つまり圧縮されている時間が異なります.
早く通過すれば圧縮不足ということが生じる.
錠剤の硬度が下がってしまいます.
硬度が下がると輸送中にワレが生じるので,錠剤の硬さは一定以上必要です.
これは打錠機の回転盤だけでなく回転体に普遍的に見られることなので,
回転体のサイズを変更する際は気をつける必要があるでしょう.
製剤機器には,粉砕機や混合機など回転体が多用されています.
’’角速度が同じでも,周速度は異なる’’
なるほど!
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