某博士課程のblog 2

私立6年制薬学部卒,博士課程進学者のblogです.記事の前にカテゴリ中のprofile(随時更新)をご覧いただきたいと思います.

薬学部でこんな研究しております/微粒子コーティング

Capsules

今日は製剤の研究に関連することを

一般向けに書こうと思います.

 

 

微粒子コーティングという技術です.

呼んで字のごとく微粒子にコーティングします.

自分の場合は薬学ですので,医薬品の微粒子を扱います.

コーティングを施すことによって,薬を光による分解から守ったり,

苦味をマスクしたり,様々な機能を付加することができます.

アリナミンの錠剤は苦味をマスクするために砂糖でコーティングしています.

錠剤のように大きい物をコーティングする技術はすでに製薬会社で確立された技術です.

しかし,微粒子にコーティングするのは非常に難しい.

微粒子,微粒子と書いていますが,対象とするのはだいたい

数μm〜数百μmです.

髪の毛1本分,小麦粉を想像してもらったらよいです.

小麦粉の一粒一粒にコーティング剤をどのように巻き付けるか.

みなさんならどうするでしょうか.

 

まぁそんなこと普通考えたことありませんよね笑

現在主流なのは,粉を装置の中で吹き上げて,細かいスプレーを吹き付ける方法です.

湿式スプレー法といいますが,そのようにして粉にコーティング液を

吹き付けてコーティングします.

書くのは簡単なのですが,少しでも水分が多いと粉と粉が水分を介して結合して,

大きなかたまり(凝集塊)を形成してしまいます.

小麦粉を想像してもらえばわかるかもしれませんが,

小さくて軽いので,そこら中にくっつきます.

装置内でうまく流動させることも非常に難しい.

 

ここまで読んで,じゃあその技術は何に使われるの?と思った方がいると思います.

 

応用先としてOD錠があります.

Oral Disntegration 口腔内崩壊錠というものです.

水なしで飲める錠剤です.

唾液で砕くのですが,ラムネを食べたような服用感です.

苦味のある薬の場合,口の中で薬が溶けると非常に苦いので,

これをコーティングすることで苦味を防ぎます.

この粒子が大きいとコーティングした粒子は溶けないので

砂を噛んだような感じになりザラザラして,非常に違和感がある.

それを200μm以下にしてやると違和感がなくなるのです.

そのために小さい粒子にコーティングする必要がある.

しかし,薬をずっと守っていては薬が体内で効果を発揮しません.

口の中では溶けださなかった薬ですが,体に吸収される部分(胃や小腸)では,

溶け出さなければなりません.

コーティング剤は溶け出す時間と場所をコントロールすることが出来るのです.

微粒子コーティングは他にもいろいろ応用があるのですが,

ここでは苦味マスクにとどめておきます.

 

ついでこんな名言があるので紹介しておきます.

A molecule is not a drug.

ただの薬物分子だけでは薬になりえない.

薬は場所と時間をコントロールしなければならない.

それらを設計するのが製剤学の仕事です.

 

だいたいこんな感じです.

学生が見直しもなしに書いた文章ですのでご容赦ください...